Dify.ai(ディファイ・エーアイ)完全攻略ガイド:AIアプリ開発を革新するノーコードプラットフォームの使い方

AIアプリケーションの開発は、長らくプログラミングスキルを持つ人々の専門領域でした。しかし、Dify.aiの登場により、その常識は大きく変わりつつあります。プログラミングの知識がなくても、誰でも直感的な操作で高度なAIアプリが作れるようになったのです。

この記事では、そんな革新的なプラットフォーム「Dify.ai」の基本から応用まで、網羅的に解説します。ノーコードでチャットボットやRAGシステムを構築する方法から、実際の活用シーンまで、詳しく見ていきましょう。

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1. Dify.aiとは何か?

Dify.aiは、プログラミングスキルが不要で、誰でも直感的にAIアプリケーションを作成できるオープンソースのLLM(大規模言語モデル)アプリ開発プラットフォームです。ノーコードでチャットボットやコンテンツ生成ツール、データ分析ツールなど、さまざまなAIアプリケーションの開発をサポートしています。

Difyの最大の特徴は、RAG(Retrieval-Augmented Generation)エンジンを搭載していることです。RAGは生成AIの精度や信頼性を向上させる手法で、関連する情報を検索・取得し、それを基に回答を生成する技術です。これにより、より高度なAIアプリケーションの開発が可能になっています。

1.1 Dify.aiの主な特徴

直感的なノーコードUI

Difyの最大の特徴は、直感的なユーザーインターフェースを備えていることです。プログラミングの知識がなくても、ドラッグ&ドロップ操作でアプリケーションを構築できます。パラメーターの設定も簡単で、初心者でも手軽にAIアプリの開発が可能です。

豊富なモデルサポート

OpenAI、Anthropic、Azure OpenAI、Llama2、Hugging Face、Replicateなど、さまざまなAIモデルプロバイダーをサポートしています。目的に応じて最適なモデルを選択でき、さらにモデル間の連携も可能です。柔軟なモデル活用ができるのが大きな利点です。

RAGパイプラインによるナレッジ機能

Difyには、RAG(Retrieval-Augmented Generation)パイプラインが搭載されています。この機能を活用することで、組織内に蓄積された独自のドキュメントやデータをもとに回答するチャットボットアプリなどを作成できます。

カスタムツールやAPIの統合

Google検索、Slackなどの外部ツールをはじめ、Dell-E、Stable Diffusionといった画像生成AIを組み込める機能があります。さらに、APIの統合を通じて独自のカスタムツールも作成できます。

豊富なテンプレートとコンポーネント

チャットボット、タスクリスト、カレンダーなど、よく使われる機能をテンプレートとして提供しているため、ゼロからの開発は不要です。必要に応じてカスタマイズを加えるだけで、短期間でアプリを構築できます。

プラグインシステムとマーケットプレイス

2025年1月にリリースされたv1.0.0-betaでは、AIアプリケーション向けの新機能「プラグインシステム」と「マーケットプレイス」が追加されました。プラグインを使うことで、AIアプリケーションに外部サービスやカスタム機能を簡単に追加できるようになっています。

2. Dify.aiの設定方法

Difyは、クラウド版(SaaS)とローカル環境(セルフホスト)の2つの方法で利用できます。

2.1 ブラウザでの利用方法(クラウド版)

  1. Dify.ai公式サイトにアクセスします。
  2. 右上の「始める」ボタンからアカウントを作成します。GoogleアカウントまたはGithubでのサインアップが可能です。
  1. ホーム画面から「最初から作成する」または「テンプレートから作成」を選択します。
  1. アプリのタイプ(チャットボット、ワークフローなど)、名前、アイコン、説明を設定します。
  1. 必要なプロンプトやパラメータを入力します。
  2. 「デバッグとプレビュー」機能でテスト実行できます。
  1. 右上の「公開する」ボタンから保存・公開し、「アプリを実行」や「サイトに埋め込む」で外部共有も可能です。

2.2 ローカル環境での利用方法(セルフホスト)

  1. GitHubからDifyのリポジトリをクローンします。
   git clone https://github.com/langgenius/dify.git
  1. dockerディレクトリに移動し、Dockerを起動します。
   cd dify/docker
   docker compose up -d
  1. ブラウザでhttp://localhost/signinにアクセスし、アカウントを作成します。
  2. あとはクラウド版と同様のフローで利用できます。

ローカル利用ではDockerの知識が必要ですが、クラウド環境に依存せずにDifyを利用でき、オンプレミスでの運用も可能になります。

3. Dify.aiの料金体系

Difyには、以下のような料金プランがあります。

プランサンドボックスプロフェッショナルチームプランエンタープライズ
料金無料月額59ドル / 年額590ドル月額159ドル / 年額1,590ドル要相談
クレジットGPT無料トライアル200回5,000回/月10,000回/月無制限
アプリ生成回数10回50回無制限無制限
チームメンバー1人3人無制限無制限
容量5MB200MB1GBカスタム
ログ履歴30日無制限無制限無制限
カスタムツール利用不可10種無制限無制限
サポートコミュニティメール優先メール・チャットSlack/電話/メール

年払いの場合は2ヶ月分の割引があります。

4. RAGとは何か?

RAG(Retrieval-Augmented Generation)は、外部のナレッジやドキュメントを検索(Retrieval)し、その情報を活用して言語モデルが回答を生成(Generation)する技術です。

通常の生成AIは学習データの範囲内で回答しますが、RAGは外部データをリアルタイムで参照して最新情報や特定の知識を含んだ回答が可能です。業務データやPDFファイルなどをインデックス化し、チャットや質問形式で必要な情報を取得・生成する際に活用されています。

4.1 RAGの仕組み

RAGの基本的な処理の流れは以下の通りです。

  1. データの取り込み:PDFやWebサイト、社内ドキュメントなどから情報を取り込みます。
  2. チャンキング:長い文書を小さなまとまり(チャンク)に分割して処理します。
  3. エンベディング(ベクトル化):テキストを数値データに変換します。
  4. データベース構築:ベクトル化したデータをデータベースに格納します。
  5. 検索:ユーザーからの質問に対して、関連性の高い情報をデータベースから検索します。
  6. 生成:LLMが検索結果を参考にして回答を生成します。

4.2 RAGの利点

RAGには以下のような利点があります。

  • 外部データを参照できるため、最新情報や専門知識に基づいた回答が可能
  • 幻覚(hallucination)を減らし、より正確な回答を提供できる
  • 組織固有のナレッジや専門分野の情報を活用できる
  • オープンなLLMでも精度の高い回答が期待できる

5. Dify.aiでRAGを実装する方法

Difyを使ったRAGの実装方法について詳しく解説します。

5.1 RAGの情報源(ナレッジ)を設定する

  1. Difyにログインし、画面上部にある「Knowledge(ナレッジ)」をクリックします。
  2. 「Create Knowledge(ナレッジベースを作成)」をクリックします。
  1. RAGで利用するデータの入力方法を選択します。以下の3つの方法があります。
  • テキストファイルからインポート:HTMLやPDFなどのファイルを取り込みます。
  • Notionから同期:Notionで管理しているドキュメントを同期します。
  • Webサイトから同期:指定したWebサイトの内容を取り込みます。
  1. 任意の方法で読み込んだあと「Next(次へ)」をクリックします。

5.2 チャンクを設定する

チャンクとは、長い文章やドキュメントをAIが処理しやすいように小さなまとまりに分割した単位です。

  1. チャンク設定画面で、以下のパラメータを設定します。
  • チャンク識別子:テキストをどこで区切るかを指定(例:段落ごとの改行「\n\n」)
  • 最大チャンク長:1つのチャンクの最大トークン数
  • チャンクのオーバーラップ:チャンク間の重複部分のトークン数
  • テキストの前処理ルール:取り込むテキストのクリーニングルール
チャンク設定画面
  1. 「Preview Chunk(チャンクをプレビュー)」をクリックして分割結果を確認します。

最適なチャンク設定の目安は以下の通りです。

チャンク化パターンチャンク長 (目安)オーバーラップ (目安)
固定サイズ1000~2000文字10~25%
概念的サイズ200語 / 600文字約10~15%

5.3 インデックス方法を設定する

インデックス方法とは、アップロードしたドキュメントを検索できるように処理・整理する方式を選ぶ設定です。

  1. 「高品質モード」と「経済的モード」の2種類から選択します。
  • 高品質モード(推奨):埋め込みモデルを使って高精度にベクトル化します。検索精度が高いですがトークン消費量も多くなります。
  • 経済的モード:各チャンクから10個のキーワードを抽出して検索対象とします。トークン消費量は少ないですが検索精度は劣ります。
  1. 「Embedding Model(埋め込みモデル)」を選択します。テキストをベクトル化するためのモデルです。

5.4 検索方法を設定する

  1. 以下3つの検索方法から選択します。
  • ベクトル検索:意味的に類似したテキストチャンクを検索します。言い換えやあいまいな表現にも強く、意味重視の検索に最適です。
  • 全文検索:キーワード一致で検索します。指定した用語での完全一致が必要な場面に有効です。
  • ハイブリッド検索(推奨):ベクトル検索と全文検索を併用し、Rerankモデルで再評価します。意味と語句の両方を考慮する最もバランスの良い手法です。
  1. 「Save & Process」をクリックして完了です。

5.5 RAGの動作をテストする

  1. 「Go to document」をクリックしてドキュメント一覧画面を開きます。
  1. 画面左の「Retrieval Testing(検索テスト)」をクリックします。
  2. RAGに対して質問を入力し「Test」をクリックすると、該当する情報とスコアが表示されます。

6. Difyでチャットボットを作成する方法

6.1 テンプレートを使ったチャットボットの作成

  1. ホーム画面から「テンプレートから選択」をクリックし、使いたいテンプレートを選択します。
  1. 名前や説明を入力して「作成する」をクリックします。
テンプレート設定
  1. 必要に応じてプロンプトやパラメータを編集します。
  1. 「実行」ボタンをクリックしてテスト実行します。
  1. 「公開する」→「更新」で保存し、「アプリを実行する」でアプリを起動できます。

6.2 RAGを活用したチャットボットの作成

  1. ホーム画面から「最初から作成」→「チャットボット」を選択します。
  1. オーケストレーション画面で、AIチャットボットの処理フローを設定します。
  • 手順:プロンプトや処理の流れを指定します。
  • 変数:ユーザー入力に応じた動的な内容を生成します。
  • コンテキスト:ナレッジベースから検索した情報をプロンプトに取り込みます。
  1. コンテキスト欄をクリックし、事前に作成したRAGのナレッジベースを選択します。
  1. 「管理」→「会話の開始」をオンにして、会話開始文を設定します。
  1. 画面右のチャット欄でテスト実行し、動作を確認します。
  1. 「公開する」から任意の方法でAIチャットボットを共有できます。

6.3 カスタムワークフローの作成

  1. ホーム画面から「最初から作成」→「ワークフロー」を選択します。
  2. 「開始」ノードで入力フィールドなどを設定します。
  1. 「次のステップ」の+ボタンから機能を追加します。
  • 質問分類機:ユーザー入力を分類して処理を分岐させます。
  • LLMノード:AIモデルを使って回答を生成します。
  • 出力テンプレートノード:回答の形式を整形します。
  1. 各ノードを接続して処理フローを作成します。
  2. テスト実行して動作を確認し、公開します。

7. Dify×RAGの活用シーン・ユースケース

DifyによるRAGの活用は様々な場面で役立ちます。以下に代表的なユースケースを紹介します。

7.1 社内マニュアル検索AI

操作手順書や社内ルールをナレッジ化し、社員が自然言語で質問するだけでマニュアル内容を検索・回答できるようにします。新人教育や属人化解消に役立ちます。

7.2 FAQボットの構築

製品やサービスに関するよくある質問と回答をもとにFAQボットを構築。Webサイトや社内ポータルに設置することで、問い合わせ対応の自動化が可能になります。

7.3 カスタマーサポート支援

過去の問い合わせ履歴やマニュアルを活用し、サポート担当者が即座に回答候補を得られるAI支援ツールとして活用できます。対応のスピードと質を同時に向上できます。

7.4 議事録・業務報告の要約

会議の議事録や営業日報をアップロードして、要点を自動で抽出・要約。読みやすく共有しやすい形で再構成できます。

7.5 ナレッジ共有ポータルの作成

部署やチームごとのドキュメントを集約し、検索や質問に対応するAIポータルを構築。全社的な情報の見える化や共有を支援します。

7.6 Notion・PDF連携

Notionでまとめた社内情報やPDF形式の社内文書をそのままDifyのナレッジベースに登録。社員は画面上で質問するだけで、対象情報を簡単に取得できます。

8. Dify×RAGの課題と精度向上のポイント

8.1 よくある課題

DifyのRAG活用でよく見られる課題には、次のようなものがあります。

  • 回答が曖昧で具体性に欠ける
  • ナレッジベースに登録したはずの情報が引き出されない
  • 情報量が過剰だったり、逆に少なすぎるなど、出力が極端になる

8.2 精度向上のポイント

RAGアプリの精度を上げるには、以下のポイントを意識すると効果的です。

  • ナレッジベースをわかりやすく整理し、無駄な表現や重複を減らす
  • どの情報をどの場面で参照させるか、コンテキストの設計を見直す
  • チャンク設定を最適化する(チャンク長、オーバーラップなど)
  • 高品質モードやハイブリッド検索を活用する
  • Pipelineファイクションで入力処理を整える
  • Graph RAGやAgentic RAGなどの高度な手法を検討する

9. まとめ

Dify.aiは、プログラミングスキルがなくても高度なAIアプリケーションを作成できる革新的なプラットフォームです。直感的なUIと豊富な機能により、チャットボットやコンテンツ生成ツール、データ分析ツールなど、様々なAIアプリケーションを短期間で開発することができます。

特にRAG機能との組み合わせにより、組織内のナレッジやドキュメントを活用した高精度なAIアプリケーションの構築が可能になります。社内マニュアル検索やFAQボット、カスタマーサポート支援など、様々な場面での活用が期待されます。

Dify.aiを使いこなすことで、AIの力を最大限に引き出し、業務効率化や顧客体験の向上を実現することができるでしょう。

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