データ分析や表計算を行う際、小数点以下の桁数を調整する場面は頻繁にあります。Googleスプレッドシートには数値を丸めるための便利な関数が用意されており、今回は主要な丸め関数である「ROUND」「ROUNDUP」「ROUNDDOWN」について詳しく解説していきます。
丸め関数の基本
Googleスプレッドシートには、数値を丸めるための3つの基本関数があります。それぞれ異なる丸め方をするので、目的に応じて使い分けることが重要です。

- ROUND関数: 標準的な四捨五入を行います
- ROUNDUP関数: 常に切り上げを行います
- ROUNDDOWN関数: 常に切り捨てを行います
それでは、これらの関数を一つずつ詳しく見ていきましょう。
ROUND関数 – 標準的な四捨五入
ROUND関数は標準的な四捨五入のルールに従って数値を丸めます。指定した小数点以下の桁数に合わせて、5以上なら切り上げ、5未満なら切り捨てを行います。
構文
ROUND(値, [小数点以下の桁数])
- 値: 丸めたい数値
- 小数点以下の桁数: [オプション – デフォルトは0] 丸めたい小数点以下の桁数。負の数を指定すると、小数点より左の位(10の位、100の位など)で丸めることもできます。
使用例

例えば以下のような結果になります:
=ROUND(3.14159, 2)
→ 3.14=ROUND(5.6789, 1)
→ 5.7=ROUND(42.5, 0)
→ 43=ROUND(42.4, 0)
→ 42=ROUND(1234, -2)
→ 1200(100の位で丸め)
ROUND関数は正負の数値に対して同じように動作します。例えば:
=ROUND(-3.14159, 2)
→ -3.14=ROUND(-5.6789, 1)
→ -5.7
重要なポイント
ROUND関数の動作について知っておくべき重要なポイントがあります:
- 5で終わる数値を丸める場合、常に切り上げられます
- 負の数を丸める場合、絶対値の大きさに基づいて丸められます
- 小数点以下の桁数に負の数を指定すると、小数点の左側(10の位、100の位など)で丸めることができます

ROUNDUP関数 – 常に切り上げ
ROUNDUP関数は常に指定した小数点以下の桁数に切り上げを行います。丸める値がゼロより大きい場合は値が大きくなり、ゼロより小さい場合は絶対値が大きくなります(より負の方向になります)。
構文
ROUNDUP(値, [小数点以下の桁数])
- 値: 切り上げたい数値
- 小数点以下の桁数: [オプション – デフォルトは0] 切り上げたい小数点以下の桁数。負の数を指定すると、小数点より左の位で切り上げることもできます。
使用例

例えば以下のような結果になります:
=ROUNDUP(3.14159, 2)
→ 3.15=ROUNDUP(5.6701, 1)
→ 5.7=ROUNDUP(5.6709, 3)
→ 5.671=ROUNDUP(42.1, 0)
→ 43=ROUNDUP(1234, -2)
→ 1300(100の位で切り上げ)
負の数に対しても同様に動作します:
=ROUNDUP(-3.14159, 2)
→ -3.15=ROUNDUP(-5.6701, 1)
→ -5.7
実務での活用例
ROUNDUP関数は特に以下のような場面で役立ちます:
- 価格計算:税込価格を計算する際に、端数を切り上げる場合
- 在庫管理:必要な在庫数を計算する際に、常に余裕を持たせるために切り上げる場合
- 時間計算:作業時間が端数の場合に、請求時間を切り上げる場合
ROUNDDOWN関数 – 常に切り捨て
ROUNDDOWN関数は常に指定した小数点以下の桁数に切り捨てを行います。これはゼロに向かって丸めることを意味します。
構文
ROUNDDOWN(値, [小数点以下の桁数])
- 値: 切り捨てたい数値
- 小数点以下の桁数: [オプション – デフォルトは0] 切り捨てたい小数点以下の桁数。負の数を指定すると、小数点より左の位で切り捨てることもできます。
使用例

例えば以下のような結果になります:
=ROUNDDOWN(3.14159, 2)
→ 3.14=ROUNDDOWN(5.6789, 1)
→ 5.6=ROUNDDOWN(42.9, 0)
→ 42=ROUNDDOWN(1234, -2)
→ 1200(100の位で切り捨て)
負の数に対しても同様に動作します:
=ROUNDDOWN(-3.14159, 2)
→ -3.14=ROUNDDOWN(-5.6789, 1)
→ -5.6
実務での活用例
ROUNDDOWN関数は以下のような場面で特に役立ちます:
- 財務計算:保守的な財務予測を行う場合
- 評価基準:最低限の基準を設ける場合
- 割引計算:端数を切り捨てて顧客にとって有利な価格を提示する場合
丸め関数の比較
3つの丸め関数の違いを明確にするために、同じ数値に対する結果を比較してみましょう。

元の値 | ROUND(値, 2) | ROUNDUP(値, 2) | ROUNDDOWN(値, 2) |
---|---|---|---|
3.14159 | 3.14 | 3.15 | 3.14 |
5.6789 | 5.68 | 5.68 | 5.67 |
-2.3456 | -2.35 | -2.35 | -2.34 |
123.456 | 123.46 | 123.46 | 123.45 |
上記の比較から分かるように:
- ROUND関数:標準的な四捨五入ルールに従います
- ROUNDUP関数:常に切り上げを行います
- ROUNDDOWN関数:常に切り捨てを行います
負の桁数での丸め
丸め関数のパワーは、負の桁数を指定できる点にもあります。これにより、10の位、100の位など、小数点より左側の桁数で丸めることができます。

例えば:
=ROUND(1234, -1)
→ 1230(10の位で丸め)=ROUND(1234, -2)
→ 1200(100の位で丸め)=ROUND(1234, -3)
→ 1000(1000の位で丸め)
同様に、ROUNDUP関数とROUNDDOWN関数も負の桁数を指定できます:
=ROUNDUP(1234, -2)
→ 1300(100の位で切り上げ)=ROUNDDOWN(1234, -2)
→ 1200(100の位で切り捨て)
実践的な応用例
それでは、これらの丸め関数を実際のシナリオで応用してみましょう。
1. 予算計画での活用
予算計画では通常、保守的な見積もりが求められます。収入は少なめに、支出は多めに見積もることが一般的です。
収入見積もり: =ROUNDDOWN(A1, -2) # 収入を100単位で切り捨て
支出見積もり: =ROUNDUP(B1, -2) # 支出を100単位で切り上げ
2. 価格設定での活用
商品価格を設定する際に、心理的価格戦略(例:999円など)を適用するケース
原価に利益率を加えた後の価格: =ROUNDDOWN(原価*(1+利益率), 0) - 0.01
3. 在庫管理での活用
必要在庫数を計算する際に、常に余裕を持たせるケース
必要在庫数: =ROUNDUP(平均日次需要*リードタイム*安全係数, 0)
4. 複数の関数を組み合わせた例
複数の計算結果を丸める場合は、関数を入れ子にすることができます。
=ROUND(SUM(A1:A10), 2) # A1からA10までの合計を小数点以下2桁に丸める
丸め関数と表示形式の違い
Googleスプレッドシートでは、数値の「表示形式」を変更することでも小数点以下の桁数を調整できますが、これは実際の値を変更するわけではありません。

例えば:
- セルに「3.14159」という値があり、表示形式で小数点以下2桁に設定した場合、表示は「3.14」になりますが、実際の値は依然として「3.14159」です。
- これに対して、
=ROUND(3.14159, 2)
を使用すると、実際の値が「3.14」に変更されます。
この違いは特に計算を行う場合に重要です。表示形式だけを変更した場合、後続の計算では元の精度の値が使用されますが、丸め関数を使用した場合は丸められた値が使用されます。
丸め関数のよくある質問
Q1: ROUNDUPとROUNDDOWN関数は常に整数に丸めるのですか?
A1: いいえ、これらの関数は指定した小数点以下の桁数に丸めます。デフォルトは0(整数)ですが、任意の小数点以下の桁数を指定できます。
Q2: 5で終わる数値をROUND関数で丸めるとどうなりますか?
A2: 5で終わる数値をROUND関数で丸める場合、その桁を切り上げます。例えば、=ROUND(2.5, 0)
は3になります。
Q3: 負の値に対してこれらの関数はどのように動作しますか?
A3: 負の値に対しても同じルールが適用されます。ただし、「切り上げ」と「切り捨て」の方向は絶対値の観点から考えます。例えば、=ROUNDUP(-2.3, 0)
は-3になります。
まとめ
Googleスプレッドシートの丸め関数(ROUND、ROUNDUP、ROUNDDOWN)は、データの精度を調整し、適切な形式で表示するための強力なツールです。それぞれの関数が持つ特性を理解し、目的に応じて使い分けることで、より効率的かつ適切なデータ処理が可能になります。
- ROUND関数:標準的な四捨五入を行いたい場合
- ROUNDUP関数:常に切り上げを行いたい場合
- ROUNDDOWN関数:常に切り捨てを行いたい場合
これらの関数を活用して、より正確でプロフェッショナルなスプレッドシートを作成しましょう。適切な丸め処理は、データ分析の質を高め、誤解を招く可能性のある不必要な精度を排除するのに役立ちます。