この記事では「滑りやすい坂論法」という論理学の認知バイアスについて解説しながら、特にビジネスやマーケティングでよく聞く「Instagramフォロワーを増やせば集客できる」という主張がいかに誤解を招きやすいかをお伝えします。
この滑りやすい坂論法は、実は子供の頃から親など身近な人からよく使われ、私自身も経験してきたものです。
論理の展開が一見納得できそうに見えて、実はどこかおかしい。そういった説得の手法なので、ビジネスの現場でも注意深く使ったり、逆に騙されないように理解しておくことが非常に重要です。
滑りやすい坂論法とは?
まず、そもそも「滑りやすい坂論法」とは何かを説明します。
これは論理学でいう認知バイアスの一種で、最初の行動や選択が連鎖的にネガティブな結果を引き起こすと主張し、その最初のステップを避けさせるために使われる論法です。
例えば、私が子供の頃に母親から言われたことが典型例です。「将来良い大学に入らないと公務員になれないわよ。公務員にならないとお金に困るでしょ。お金に困ると結婚できないし、いい暮らしができない。だから大学に行きなさい」という話です。
この論法は、最初のステップ(良い大学に入ること)がネガティブな結果(幸せになれない)につながるとし、そのステップを避けないように説得するものです。し
かし冷静に考えると、「公務員にならないとお金に困る」という部分は明らかにおかしいですよね。公務員であってもお金に困る人はいますし、公務員以外でもお金に困らない人はたくさんいます。
このように、滑りやすい坂論法は一見納得できそうで、実は途中の論理が飛躍していたり根拠が不十分だったりすることが多いのです。
滑りやすい坂論法の構造
- 最初のステップを踏まないとネガティブな結果になると主張する
- そのネガティブな結果を避けるために最初のステップを踏ませようとする
- 途中の論理や因果関係は曖昧だが、感情的に納得させることが多い
このような構造になっているため、感情に訴えかけて説得することができる一方で、論理的には間違っていることも多いのが特徴です。
子供の頃の体験から学ぶ滑りやすい坂論法の怖さ
私は子供の頃、母親から「良い大学に入らないと公務員になれない」「公務員にならないとお金に困る」「お金に困ると結婚できないし幸せになれない」という話を繰り返し聞いて育ちました。これがまさに滑りやすい坂論法の典型例です。
子供の頃は論理の飛躍に気づけず、母親の言葉をそのまま信じ込んでいました。ですが大人になって冷静に考えると、これがいかにおかしな論理かが分かります。にも関わらず、親という信頼できる存在から繰り返し言われるため、子供のマインドセットに強く影響してしまうのです。
この経験は、滑りやすい坂論法がいかに人の思考に影響を与えやすいかを示しています。特に親子関係や教育の場面で使われると、子供の未来の選択や価値観に大きな影響を与えかねません。
ビジネスやマーケティングでの滑りやすい坂論法の活用例
では、この滑りやすい坂論法はビジネスやマーケティングの現場ではどう使われるのでしょうか?実は、商品やサービスを売る側もこの論法をうまく使うことがあります。例えば「Instagramフォロワーを増やさないと集客できない」という主張も滑りやすい坂論法の典型です。
Instagramフォロワー増加と集客の関係は本当にイコール?
「Instagramのフォロワーを増やさないと集客できない」とよく言われますが、これは本当に正しいのでしょうか?
まず、フォロワーと集客は全く違う概念です。フォロワーは単に興味を持ったり気軽にフォローした人の数ですが、集客は実際に商品やサービスを購入する可能性のある見込み客を集めることです。
実際に、フォロワー数が多くても集客に結びつかない人はたくさんいます。認知度があるだけでは、人気や信頼につながらず、集客できないのです。つまり、フォロワー数=集客力ではないということです。
Instagramマーケティングの実態とデータ
さらに言うと、無料でフォロワーを増やすオーガニックなInstagramアカウントの場合、そのフォロワーの多くは既存客であることが調査で分かっています。ある大手企業がInstagramのフォロワー増加を外注したところ、実際に増えたフォロワーの9割は元々の顧客だったという事例もあります。
つまり、Instagramは新規集客よりも既存客のフォローや関係維持に向いているメディアであると言えます。新規の見込み客を大量に獲得するには、広告を使うなど別の方法が必要です。
このように、Instagramフォロワーを増やせば集客できるというのは滑りやすい坂論法の典型であり、冷静にデータや事実を見極めることが重要です。
滑りやすい坂論法を正しく使うためのポイント
滑りやすい坂論法自体は悪い論法ではありません。正しく使えば、説得力のあるメッセージを作ることができます。重要なのは、主張の根拠や証拠をしっかり示すことです。
感情と論理のバランスが大事
効果的な説得には、まず感情を動かすストーリーを伝え、その後に論理的な証拠を示すことが不可欠です。感情が動かないと、いくら論理的に説明しても人は行動しません。
例えば、私が商品を販売するときには、商品を買わないことで時間がかかって成功確率が下がるという滑りやすい坂論法を使います。しかしそれだけでなく、私自身の体験やお客様の事例を交えて、なぜその商品が必要なのかを感情的に伝えます。
さらに、購入することで時短できるロードマップを具体的に示し、客観的に納得してもらうようにしています。
根拠と証拠を示さない滑りやすい坂論法は危険
一方で、自分の都合だけで論理を飛躍させて「これをしないと幸せになれない」などと主張するのは、受け手を誤った方向に誘導することになります。これは信頼関係を損なうだけでなく、ビジネスとしても長期的に見てマイナスです。
消費者として滑りやすい坂論法に騙されないために
消費者としても、この滑りやすい坂論法に騙されないように注意が必要です。特にマーケティングの場面では、「〇〇をしないと成功できない」「〇〇をしないと損をする」といった主張が多いですが、その主張の根拠をよく確認しましょう。
- 主張が本当に正しいか冷静に考える
- 論理の途中に飛躍や根拠のない部分がないかチェックする
- 証拠やデータが示されているか確認する
- 感情的な話に流されすぎない
特に「Instagramフォロワーを増やせば集客できる」という話は、フォロワー数だけを強調して集客の実態や証拠を示していないことが多いので注意が必要です。
まとめ:滑りやすい坂論法を理解して賢く使いこなそう
滑りやすい坂論法は、日常生活からビジネスの現場まで幅広く使われている説得の技法です。一見納得できそうに見えて、論理の飛躍や根拠の不十分さが隠れていることが多いのが特徴です。
子供の頃の親の説得や、マーケティングの「Instagramフォロワー=集客」という主張は、まさにこの論法の典型例です。消費者としては、冷静に論理と根拠をチェックし、騙されないように注意しましょう。
一方で、ビジネスで説得力を持ってメッセージを伝えたい場合は、滑りやすい坂論法を正しく使うことも有効です。感情を動かすストーリーと論理的な証拠を組み合わせて、相手に納得してもらうことが大切です。
この論法を理解し、賢く使いこなすことで、あなたのビジネスやコミュニケーションの質を大きく向上させることができるでしょう。