”東京都の水道水と100円のミネラルウォーターって味がほとんど変わらないって知ってましたか?”
どうもこんにちは、山田どうそんです。
普段からコンビニや自動販売機で普通の水であるミネラルウォーターを購入していませんか?
でも、実はミネラルウォーターと東京都の水道水は味がほとんど同じなんです。
「えっ!嘘だ!ミネラルウォーターのほうが上手いし体にいいに決まってるじゃん」
と思ったあなた。
これ、実は、大きな間違いなんです。
東京水飲み比べキャンペーンの結果
2017年に約3万人が参加した水飲みキャンペーンがあります。
引用:東京都水道局
この結果を見て下さい。
これは、東京都水道局のウェブサイトのデータです。
参加者30,613人に対して、水道水の方がおいしいと答えた人が11,967人で全体の39.1%。
ミネラルウォーターの方がおいしいと答えた人が12,560人で41.0%。
どちらもおいしいと答えた人が6,076人で全体の19.8%になりました。
このように、水道水とミネラルウォーターではほとんど差がなかったという結果になったんですね。
実は、最近の水道水はかなり美味しいんです。
ミネラルウォーターは100円ぐらいです。水道水は500mlが0.1円ぐらいでしょうか?
となると、僕たちは、1000倍以上もするミネラルウォーターに100円を払って水を購入していることになります。
これは何故なのでしょうか?
水道水はカルキ臭い気がする
このようなデータが出ているにも関わらず、あなたはきっとこんな風に思ったのではないでしょうか?
「水道水ってカルキ臭いし、トリハロメタンとかもあって心配だよな…」
トリハロメタンというのは、発ガン性を疑われたことで、危険視された物質です。
この物質が水道水に含まれているということで一時期、浄水器がめちゃくちゃ売れた時代がありました。
実は僕も、水道水はまずいというとても強い思い込みを持っています。
子供の時に、東京の水を飲んだ時に、あまりに不味くて飲めなかった記憶が強く残っています。
でも、実は、それは過去の話。
今の水道水は、ミネラルウォーターとそれほど味が変わらないぐらい美味しく安全な飲み物になっているんです。
それでも買っちゃうミネラルウォーター
僕は、この事実を知ってから水道水の安全がわかって安心しました。
でも、不思議と今でもミネラルウォーターを飲んでしまっています。
どう考えてもこの行動はおかしいですよね。全く合理的ではありません。
味がほとんど変わらない水に1000倍以上の値段を出して買ってしまうわけです。
これには、人間の心理がとても強く関係しています。
実は、人間は今回のようなミネラルウォーターのように合理的に行動していないケースがたくさんあります。
例えば、太るとわかっているのに、アイスクリームを食べてしまったり。
体に悪いとわかっていながらお酒を飲み過ぎてしまったり。
つまり、人は合理的に行動しているようで全く合理的に行動していないんです。
このような人間の合理的ではない行動を解き明かそうとするのが「行動経済学」です。
行動経済学は、2002年にダニエル・カーネマンがノーベル経済学賞を受賞してから多くの人に知られるようになりました。
実は、このカーネマンが行動経済学で実証した「アンカリング効果」というもので考えると今回のミネラルウォーターの不思議を解明することができます。
アンカリング効果とは
アンカリングとは、「錨を下ろす」という意味です。
錨のように人の心に、ある数字をフックとして残す現象のことを言います。
ダニエル・カーネマンは、ある実験をしました。
学生を集めて2つのグループに分けて、宝くじの時に使う回転式の円盤を回して出た数字をメモさせました。
一つのグループでは、必ず10が出るようにして、もう一つは必ず65が出るように細工をしました。
そのあとに、次のような質問を2つしました。
- 国連加盟国に占めるアフリカ諸国の比率はその数字よりも大きいですか?
- では、その比率は何パーセントですか?
2つ目の質問は、円盤でメモらせた数字とは全く関係ないにも関わらず、「10」を意図的に出されたグループの平均は25%。「65」を意図的に出されたグループは平均45%と回答しました。
カーネマンは、この現象について「人は無意識に最初に見せられた数字に大きく影響される」と説明し、これに対して「アンカリング効果」と名付けました。
1980年代東京の水道水はまずかった
このアンカリング効果がミネラルウォーターを100円で購入する人の心理に大きく影響しているヒントになります。
僕は1980年生まれです。
この時代、東京の水道水はカルキ臭くてとてもまずかったんです。
1984年の利き水大会で、東京の水は全国でも最下位でした。
僕は秋田県出身ですが、うちのばあちゃんからは、「東京の水道水はまずいから飲むものじゃない」と言い聞かせられていました。
そして、このあたりの時期に、採水地付近の工場排水の問題がメディアに大きく取り上げられたことで、「水道水には発がん性物質のトリハロメタンが含まれている」と思い込むようになります。
そのあとに、1990年代に「安全でおいしい水」ということでミネラルウォーターが出てきて一般的になっていきます。
「ペットボトルの水は美味しくて安全だ」という強い思い込みが心の中に根付いています。
逆に言うと、水道水は不味くて危険だから飲まない方がいいと言う思い込みも同時に働いていることを意味しています。
こんな風に言われ続けてきた水道局もこのままではいけないと思い、努力を重ねてきました。
例えば、東京都水道局は、高度浄水設備を設置して、品質向上に努めました。
その結果、目隠しの利き水テストでミネラルウォーターとそれほど変わらない評価をもらえるまでに改善したのです。
一旦根付いた思い込みはそう簡単には消えない
結果として、水道水は、ミネラルウォーターとほぼ同じ品質になっているのですが、一旦広がったネガティブなイメージはそう簡単に払拭できるものではありません。
若い人の中には勝手な思い込みで水道水を飲んだことすらない人もたくさんいます。
このままではいけないと言うことで、水道局は工夫しました。
なんと、水道水をペットボトルに入れて「水道水ボトルウォーター」なるものを作って販売してしまいました。
東京水(東京都水道局) 500ml 103円
はまっ子どうし The Water(横浜市水道局) 500ml 110円
さいたまの水(さいたま市水道局) 475ml 110円
これ、普通に水道から出る水です。
それなのに、1000倍以上の高い値段をつけて売っているんです。
水道局もよく考えたものです。
これが、アンカリングの威力です。
最後に
このように、アンカリング効果は僕たちの日常生活でもたくさん目にすることができます。
1000倍もする水にお金を払ってまで飲んでしまうほど強力な威力を発揮するのがアンカリング効果です。
この効果は、ヒヨコが最初に見たものを親と思いこんでしまう「刷り込み」効果ととても似ています。
一番最初に強く思い込んだものをずっと信じ続けてしまうというのが人間心理なんです。
これは、セールスするときにもとても重要なポイントです。
あなたが、販売する商品が「安い」と思ってもらえるか「高い」と思ってもらえるかは、最初に見せる数字と強く関連します。
ですので、セールスをするときに、あなたが販売したい商品と対比させるものを高いものと比較してください。
ぜひ、参考にしてください。