新しいAIのモデルが出るたびに「結局どれを使えばいいの?」と迷ってしまう方に向けた記事です。10月26日にOpenAIから出たGPT-6.1 Terraを例に、新しいモデルほど上とは限らない理由をお話しします。そのうえで、モデルを選ぶ前に「渡す仕事」を1つ決めると、ぐっと選びやすくなることをまとめました。
AIを扱うYouTubeチャンネルのコメント欄を見ていると、こんな声がありました。
何の作業でソルを使うか、テラを使うか悩むわ
「AI素人のせいか、1番上のモデルの使い道が分からない」という声もありました。新しいモデルが出るたびに、結局どれを使えばいいのか迷ってしまいますよね。
先に結論を言っておきます。新しいモデルほど上とは限りません。そして、モデルを選ぶ前に渡す仕事を先に決めると、ぐっと選びやすくなります。
「新しいほど全部いい」と思ってしまうのは自然なこと
新しいモデルに迷うとき、心の中にはたいてい「新しいモデルほど、前より全部いいはず」という思いがあります。
そう思ってしまうのは自然なことです。スマホもパソコンも、新しく出たものはたいてい前より良くなっていますよね。AIのニュースも「性能が上がった」「賢くなった」という形で届きます。しかも名前の数字も、5から6へとどんどん大きくなっていきます。これだけそろえば、新しいほうが全部上だと思うのは当たり前です。
前のものができることは全部できて、そのうえでもっと良くなっているものを「上位互換」と言います。なので、ここではこの思いを「上位互換の思い込み」と呼ぶことにします。
新しいモデルに迷ったのは、あなたの使い方が下手だからではありません。この思い込みがあると、仕事とモデルの組み合わせがずれてしまうんです。
上位互換の思い込みで起きる3つの空回り
上位互換の思い込みがあると、具体的にはこんな空回りが起きます。
1. 1番重い仕事をそのまま渡して、がっかりする
新しいモデルが出ると、1番上のモデルのつもりで、1番重い仕事をそのまま渡してしまいます。たとえば「長いものを1回で完成させてほしい」といった仕事です。ところが、思ったところまで進めてくれません。中身も思っていたより薄いんです。すると「新しいのに使えない」とがっかりしてしまいます。
2. どんな仕事にも1番上のモデルを使って、枠が一気に減る
反対の空回りもあります。「上のほうがいいはず」と、どんな仕事にも1番上のモデルを使ってしまうパターンです。すると、ちょっとした仕事でも利用の枠が一気に減っていきます。コメント欄にも「1番上のモデルだと、15分で5時間分の枠を食い尽くしてしまう」という声がありました。
3. 次のモデルが出るたびに、全部の仕事で試し直す
そして次の新しいモデルが出ると、また全部の仕事で試し直すことになります。これでは疲れてしまいますよね。
がっかりするのも、枠を使い切ってしまうのも、試し直して疲れるのも、根っこは同じです。モデルを「新しいか古いか」「上か下か」という1本の線だけで見ているんです。
モデルの並びは「1本の線」ではなく「持ち場の地図」
テラは、もともと「1番上」として出たモデルではない
では、どう見ればいいのでしょうか。ここで、作った会社がテラをどう紹介しているかを見てみます。
OpenAIは、それぞれのモデルに違う役割を持たせて出しています。
- アストラ:1番難しい課題向け
- ソル:主力
- テラ:性能とコストのバランスを取ったモデル
- ルナ:軽い作業向け
つまりテラは、最初から1番上として出されたモデルではないんです。得意なこととして挙げられているのは、提案書の下書き、フォームへの入力、画面を見ながらのアプリの操作など、毎日の仕事の中の作業です。毎日のたくさんの作業を、早く手頃に回すのがテラの持ち場なんです。
もちろん、前のテラと比べればちゃんと良くなっています。でも、前のテラより良くなったからといって、ほかの持ち場のモデルよりどんな仕事でも上、というわけではありません。モデルの並びは上と下の1本の線ではなく、持ち場の地図なんです。
実はコメント欄にも、もうこう選んでいる人がいました。「テラは事務処理向き。会計処理や営業メールはテラで十分」という声です。しかもその人は「自分の仕事なら、やっぱりソルかな」と続けていました。どっちが上かではなく、どの仕事に向いているかで見ているんですね。
人に仕事を頼むときと同じ
これは、人に仕事を頼むときと同じです。たとえば、腕のいいベテランのデザイナーに、名刺の文字の直しまで全部頼んだりはしませんよね。反対に、早くて手頃な人に「会社の顔になるロゴを一晩で仕上げて」とは頼みません。
「この仕事はどっちの持ち場か」で選んでいるはずです。AIのモデルも、それでいいんです。
選ぶ前に、今週の仕事を1つだけ箱に入れる
やることは1つだけです。モデルを選ぶ前に、今週の仕事を1つだけ決めてください。そして、その仕事を2つの箱のどちらかに入れます。
- 今週の仕事を1つ決める
- 2つの箱のどちらに入るかを考える
- 1つ目の箱「粘ってほしい仕事」:企画を考える、長い原稿を書く、込み入った作業を最後までやり切る、といった考えることが多い仕事
- 2つ目の箱「早く回したい仕事」:文章を整える、下書きを何本か出す、たくさんの資料から決まったところを拾う、といった量が多くて形がある程度決まっている仕事
- 箱に合わせてモデルを試す
- 粘ってほしい仕事なら、考えることが多い作業を得意とするモデルを試す
- 早く回したい仕事なら、速さや使える量も見ながら、テラのような手頃なモデルを試す
新しいモデルが出たときも、見るのは「どっちの箱の仕事が得意か」だけで大丈夫です。モデルの名前が変わっても、同じ見方で選べます。
モデルの切り替え方が分からなければ、使っているAIに聞けば教えてくれます。
どちらの箱にも入れたくない仕事
仕事を箱に入れようとすると、どちらの箱にも入れたくない仕事もきっと出てきます。それは、AIに渡さずに自分で持っておく仕事です。それもちゃんと分かっておけばいいんです。
僕もAIを持ち場で分けて使っています
僕自身も、AIを持ち場で分けて使っています。
- 考えて書くのはClaude
- 出来上がったものの点検はCodex
- 調べ物はGoogleのAntigravity
どれが1番賢いかで選んだわけではありません。それぞれの得意なことと使える量に合わせて、持ち場を決めただけです。
でも、3つも使わなくて大丈夫です。1つのAIの中でモデルを選べるなら、「粘ってほしい仕事」と「早く回したい仕事」で選び分けるだけで、同じことができます。
まとめ
- 新しいモデルに迷ったのは、あなたの使い方が下手だからではありません。原因は「新しいモデルほど前より全部いい」という上位互換の思い込みです
- モデルの並びは上と下の1本の線ではなく、持ち場の地図。テラは、毎日のたくさんの作業を早く手頃に回すのが持ち場です
- モデルを選ぶ前に今週の仕事を1つ決めて、「粘ってほしい仕事」か「早く回したい仕事」か、どちらかの箱に入れてみてください
見るところを「どれが1番すごいか」から「この仕事をどこに渡すか」に変えるだけで、新しいモデルが出たときの迷いはずいぶん軽くなります。そして、箱に入れなかった仕事のほうにこそ、自分が持つ仕事が隠れています。
詳しい話の流れは、動画でも見られます。













