プレゼンテーションスキルの基本

今回は、プレゼンテーションの基礎スキルをまとめたいと思います。

オンライン講師ビジネスの、どセンターピンスキルの一つは何かと問われたら、即座にプレゼンスキルと答えます。

なぜなら、伝えるスキルが乏しいと、どんなに価値ある商品を作っても正しく伝えるスキルがなければ、お客さんに商品が届かないからです。

逆に、プレゼンスキルがあれば、商品を届けることもできますし、YouTube動画で視聴者に価値を届けることもできます。

プレゼンは、生まれ持った話すスキルと混同されがちですが、イコールではありません。

そして、プレゼンは、誰とでも会話ができる、コミュニケーションが上手な人ができるもの、という思い込みがある方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。

プレゼンは、後天的に身につけることができるスキルであり、大事なのは話す順番と伝え方です。

ですから、このプレゼンスキルを学ぶことで、コミュニケーションスキルも上げられるのです。

「自分は話すのが苦手」と思っている人にこそ、学んでほしいスキルです。

これまで100コース以上オンラインコースを作ってきた僕が、プレゼンスキルとして特に重要だと思う要素について基礎からまとめていきたいと思います。

ぜひ参考にしてください。

【プレゼンを正しく理解する】

そもそも、プレゼンとは何か?というこの言葉の定義を明確にして解像度を高め、明確な理解に努めたいと思います。

■プレゼンとはコミュニケーションの総合力

プレゼンとは、「話が上手い」ではありません。

プレゼンとは、コミュニケーションの総合力です。

  • 扱うテーマと内容
  • 資料の中身とデザイン
  • 自然な振る舞い
  • しゃべりの巧みさ
  • 雰囲気作り

これら、全てを総合的に身につけることで、「価値を正しく伝える」ことができます。

しゃべりというのは、プレゼン要素の一部でもちろん重要ですが、それだけを磨けばいいというものではありません。

■ENDCORE(エンドコア)モデル

コミュニケーション研究の重鎮で、大坊郁夫(だいぼういくお)さんという方がいます。

この方が、コミュニケーション能力について既存研究の整理と統合を行い、ENDCORE(エンドコア)モデルを提唱しました。

ENDCOREとは、

  • Encode(自己を表現する能力)
  • Decode(他者の発言を受け止める能力)
  • Control(自己を統制する能力)
  • Regulate(他者との関係を調整する能力)

この4つです。

プレゼンのしゃべりの背景には、これら4つを総合的に高めていくことが大事ということです。

これが、ENDCOREモデルのイメージ図です。

このように、自己管理スキルが根底にあり、左右に放出系として「自己表現力」、反応系として「他者需要・解読力」があります。

その上に、対人関係スキルとして「関係調整力」があります。

これをさらに、縦軸に「難易度」横軸に「汎用性」として、扇形に積み上げると、このようになります。

横に広がれば広がるほど、より多くの人に影響力を与えられるというイメージです。

つまり、プレゼン力(コミュニケーション力)を上げることで、オンラインビジネスとしての仕事に直接的に影響を与えられる、ということがわかると思います。

■プレゼンは単に意見を通すものではない

次に、よくあるプレゼンの誤解を解消しておきたいと思います。

プレゼンというのは、あなたの意見を一方的に押し通したり、相手を丸め込むために行うものではありません。

この大前提を間違えてしまうと、高圧的な主張になってしまい、求める結果を得られない可能性があります。

プレゼンとは、

「あなた自身の考えを正しく伝える」

という行為です。

そして、相手の求めている価値と合意する場所を提案する行為です。

大事なのは、双方向性です。

つまりは、聞き手のことを考えることが何よりも重要だということです。

【プレゼンは説得すること】

プレゼンとは何か?について、もう少し解像度を高めたいと思います。

プレゼンとは、説得することです。

説得とは、

「相手の自由意思を尊重しながらも、その人の考え方や行動を変えさせようとするコミュニケーション行為」

ということです。

次に、この説得のために重要な要素について深掘りしていきます。

■説得の3要素「ロゴス・パトス・エトス」



古代ギリシャの哲学者であるアリストテレスの「弁論術」はご存知でしょうか?

読んだことはなくても、一度は耳にしたことがある方も多いと思います。

その中の説得に必須の3要素とされているものが、「ロゴス・パトス・エトス」です。

  • ロゴス(Logos):論理が通っている
  • パトス(Pathos):感情が入っている
  • エトス(Ethos):人として信頼できる

この3要素です。

ロゴスは、ギリシャ語で「理性」や「言語」を意味します。

この言葉を語源としている英語が「ロジック(Logic:論理)」です。

まず、大前提として、あなたの主張が論理的に納得できるものであるかどうか。

これが重要になります。

そして、次にパトスです。ギリシャ語で「感情」を意味する言葉です。

人は、論理が正しくても感情で納得できなければ受け入れてくれません。

最新の脳科学研究では、人の意思決定のほとんどは、情動(心の動き)で決まり、論理はそれを後づけで補足しているにすぎない、という研究結果も出ています。

それほど、パトス(感情)を動かすことは重要です。

ここで最も効果的なのがストーリー性です。

そして、最後のエトス。エトスとは「精神」や「性格」という意味の言葉です。つまりは、話し手が良い精神を有しているという意味ですね。

簡単にいうと、信頼に足る人かどうかということです。

このエトスから派生して、現代英語の「エシックス(ethics)」すなわち、「倫理」という言葉が生まれています。

よく、「何を言うか」よりも「誰が言うか」が大事だ、と言われますが、その言葉を言うに値する生き方ができるかどうか、が大事ということです。

■ロゴス構築のポイント

パトス、エトスはもちろん重要ですが、まず最初にロゴス(論理)が構築できていないとどうしようもありません。

例えば、

「私は海外旅行に行くためにお金を貯めたい。だから、仕事をしません」

こんな論理は、よくわからないですよね。

論理が破綻していると言えます。

「私は海外旅行に行きたい。だから、30万円貯めたい。だから、3ヶ月アルバイトしてお金を貯めます」

これは、論理的に納得できますよね。

このように、まずは話の骨組みをしっかりと作ることが大事です。

ただ、ここで勘違いして欲しくないのは、ロゴスは、エビデンスで主張を固めるというものではありません。

ロゴスは「話の本質的な内容は損なわない形でやさしくわかりやすく伝える」ために行うものです。

つまり、大事なのは、論理が正しいか、以上に相手にわかりやすく伝わるか?の方が重要ということ。

その時に知っておきたいのが、具体と抽象の往復です。

例えば、具体的に話していてわかりづらい場合は、抽象化して本質を見せることで、その理解が深まることがあります。

逆に抽象的すぎてわかりづらいときに、具体的な事例や例え話を伝えることで、その抽象が具体的にイメージできます。

相手にわかりやすく伝えるスキルに長けている人は、プレゼンの中で、これを繰り返しています。

そして、もう一つロゴスを伝える上で覚えておきたいのは、擬似体験と経験です。

もし、あなたのロゴスが、説明よりも経験してもらうことで理解が深まるのであれば、実際にやってもらいましょう。

ただ、この経験は、オフラインのセミナーでは可能ですが、オンラインのプレゼンでは現実的ではありません。

その場合は、擬似体験をしてもらうことで、仮想体験を促すことができます。

擬似体験というのは、あなたのストーリーを語ることで、相手の過去の経験とリンクしてもらうことです。

例えば、誰でも子供時代はあります。

僕ら世代の男性だったら、誰でも一度は、ドラゴンボールのカメハメ波をやった経験があるはずです。

そのストーリーを語ることで、聞き手が自分の幼少期に遡って、自分がカメハメ波をやった経験と紐づけて話を聞いてくれるのです。

カメハメ波を論理で説明するよりも、ストーリーや経験と紐づけることで、簡単にその背景や意図を伝えることができることもあります。

人が納得する現象の本質を理解する上でラーニングピラミッドが参考になります。

人は、より下の「アクティブラーニング」の要素で納得感が高まります。

「自ら体験する」はより納得感が高いアクションです。

プレゼンの中で、この要素を入れることができないか、考えてみてください。

■パトスを自然に表現する

ロゴスができたら、今度はパトス(感情)です。

ここで2つの軸があります。

一つは、プレゼン自体に感情を乗せるという軸。

そして、もう一つは、聞き手の感情を動かすという軸です。

大前提、プレゼン自体の感情表現が乏しいと、聞き手の感情も動かしづらくなります。

例えば、あなたが文章をなんの感情も入れずに棒読みしたとしましょう。

それを聞いて聞き手は感情が動くでしょうか?

逆のパターンを考えるとわかると思いますが、何も感じないはずです。

ですから、まずは、プレゼン自体に感情を乗せる、ということが大事です。

ただ、実はこの手法は何も難しいことはありません。

すでに、科学的にどうすればいいかは明確になっています。

それは、「自分らしく振る舞うこと」です。

嘘のない自分として自然に自分の感情を乗せることが大事です。

実は、これからのAI時代、これが一番重要になります。

このような、自分自身の信念や正義、価値観を軸にした自然な振る舞いを「オーセンティック(authentic:本物の・真正の)」であると定義します。

そして、これがリーダーシップに重要なこともわかっています。

こないだ、視聴した、米国のグルの一人であるリッチシェフレンも同じことを言っていました。

これからのAI時代に求められるのは透明性である、と。

その人が、信頼できるかどうか、これこそがこの先より重要視されてくると。

だから、あなたがビジネスをする上で大切にしている価値観を発信することで、自然とパトスが生まれ相手に伝わるということです。

■エトスは積み重ね

そして、最後にエトスです。エトスとは「人格が信頼できること」です。

もっとわかりやすくいうと、過去の実績ですね。

ですから、ここで大事になるのは「自己紹介」の部分です。

これが、プレゼンの成否を分けます。

なぜなら、人には「初頭効果」という心理学の理論があり、人の記憶に最も強く残るのは、一番最初の情報だからです。

ただ、ここで気をつけたいのは、実績をひけらかすことではないということです。

これを気をつけないと、自慢の羅列の自己紹介のようになってしまって、マイナス効果です。

無理に盛ろうとせずに、シンプルに事実を伝えましょう。

無理に実績を盛っても、はっきり言って、ばれます。

その時に、マイナスの影響が出てしまうので、事実をシンプルに伝える。

これが一番効果的です。

では、こう聞くと、何の実績もない人は何も語る資格がないのか?と考えてしまうかもしれません。

ですが、もちろんそんなことはありません。

ただ、半分は、Yesとも言えるので、そこは真摯に向き合って、実績を作る努力は必要です。

はっきりいって実績が生み出す信頼に変わるものはありません。

ですが、説得には、3つの要素があります。

「ロゴス、パトス、エトス」です。

エトスが、不十分であれば、他の2つで補うしかありません。

徹底的なエビデンスや論理、それにプラスして情熱です。

まだ実績がない場合は、ともかくロゴスとパトスに注力して一つずつ実績を積み上げていくことです。

ショートカットはありません。

実績というのは、偽証しないかぎりは、日々の積み重ねでしか手に入らないからです。

【ストーリーを作る】

次は、メッセージが伝わるための構成について解説します。

どんな内容をどんな構成で伝えることが重要か。

その基本を学びます。

■聞き手目線で作る

プレゼンで何よりも重要なのは、「聞き手目線」です。

この当たり前のことが、思っている以上に難しいんです。

多くの人は、知っていてもできないことがたくさんあります。

それもこの一つです。

知っていることと、できることには大きな乖離があります。

ソクラテスの言葉に「大工と話すときは大工の言葉を使え」というものがあります。

ドラッカーにも引用された、この表現。

聞き手が誰なのか?に合わせて、使う言語を変える必要があります。

このように、聞き手がよく使う言葉を「インサイダーランゲージ」と言います。

■1メッセージ1コンセプトがエピソード記憶に届く

プレゼンのストーリーは、1メッセージ1コンセプトを明確化して、作っていくことが大事です。

その理由を人間の記憶という観点からお伝えしたいと思います。

記憶には大きく3つの種類があります。

  • 感覚記憶(一瞬だけのイメージで即座に消える)
  • 短期記憶(すぐに利用できる状態で短時間保持されている情報)
  • 長期記憶(脳に長期的に保持される情報)

感覚記憶というのは、ある瞬間に脳が受け取った全ての情報のことです。

五感で今受け取っているもの、それが感覚記憶です。

その多くは、その場ですぐに忘れられてしまいます。

そして、短期記憶。

短期記憶は机の上のようなイメージです。

一時的に置いておくものや引き出しから机の上に出した、今必要な道具を置いておく場所のようなイメージ。

一時的に置いておいて、長期記憶(引き出し)に入れなかった場合は、忘れてしまいます。

一時的に置いておいた道具が、長く利用した方がいいとなり、長期記憶(引き出し)に入ると、ずっと覚えてられるというイメージです。

そして、長期記憶。

この長期記憶の種類をさらに分解するとこのような種類があります。

長期記憶には、

  • 意味記憶
  • エピソード記憶
  • 手続き記憶
  • 潜在記憶

この4つがあります。

意味記憶というのは、リンゴとは何か?ペンとは何か?という世界を取り巻く基礎的な情報です。

手続き記憶というのは、やり方に関する情報です。リンゴをどうやって剥くか?ペンをどうやって使うか?というものですね。

潜在記憶というのは、長年の経験で体で覚えた記憶です。自転車の乗り方や車の運転の仕方などはここに入ります。

つまり、車の運転を始めた人は、まずエンジンをかけるよね、そしてシートベルトをして、と考えますが、これは手続き記憶です。

でも、長年車を運転している人はこんなことは考えません。体が覚えているので無意識で、エンジンをかけシートベルトをして、サイドミラーやバックミラーを見て発進します。

これが、潜在記憶です。

そして、エピソード記憶ですが、これが人の記憶にとっては非常に重要です。

これは、出来事に対する記憶です。

子供の時に、リンゴを剥こうと思ったけど、綺麗に皮だけ剥けなかった、とか。

自転車の補助輪を外して乗ったら、曲がれなくて畑に突っ込んでしまった、とか。

このように物事が複合的に絡まってストーリーをなしている記憶のことを言います。

エピソード記憶は、最も強く記憶に残りやすいとされています。

長期で記憶しているものはほとんどストーリーとして覚えていることが大半です。

エピソード記憶には、喜怒哀楽という感情も含まれます。

つまり、エピソード記憶は、呼び起こされると、その時のストーリーが想起されて、ドーパミンなどの脳内物質が分泌されて、印象的だった体験を「思い出」という形で強く記憶に留めます。

つまりは、プレゼンをストーリーとして長期で覚えてもらいやすくするために構成する必要があるということです。

■サブメッセージは3つまでにする

1メッセージ1コンセプトをメインメッセージとした場合、サブメッセージは3つまでにすることを推奨します。

なぜなら「短期記憶の限界数」というものが「4±1」だからです。

1956年に認知心理学者のジョージ・ミラーが発表した「マジカルナンバー7」は聞いたことがある方も多いと思います。

人の短期記憶は「7±2」というものです。

ですが、近年より厳密な検証がされた結果、どうやらもっと少ないということがわかってきました。

そこで、最近有力な説が、心理学者のネルソン・コーワンが提唱した「4±1」です。

ちなみに、「±1」というのは、人それぞれの生まれもった脳の特徴や覚えるべき内容の難易度や本人の興味にも影響し、その時々で変わるということを意味しています。

ですから、しっかりと伝えたいのであれば、サブメッセージを3つに絞るということがポイントになります。

世の中、3つのものって非常に覚えやすく、たくさんあります。

信号の「赤・黄・緑」、戦国武将の三英傑「織田信長、豊臣秀吉、徳川家康」、桃太郎の「犬、猿、キジ」。

ですので、できれば3つ、どんなに多くても5つ以内に収めてサブメッセージを作ってみてください。

■プレゼン構成の中身の作り方

次は、プレゼンの中身をどのように構成するかについて解説します。

実は、プレゼンというのは、大きなテーマに対して、大きく2つの構成で成り立っています。

  • テーマ
  • 結論
  • 理由

これだけです。

サブテーマがある場合は、このようになります。

この形式を取らない例外があるとすれば、結論を聞き手に委ねる場合です。

答えが出ないテーマを議論することが目的の場合は、このスタイルを取らない場合もあります。

しかし、一般的なプレゼンは全てこのスタイルです。

そして、プレゼンの伝える順番は、大きくこの2つしかありません。

  • Why So型(先に結論を伝えて、なぜならというビコーズで理由を伝えるパターン)
  • So What型(理由を先に伝えて、何が言いたいかを言わず結論を後から伝えるパターン)

です。

そして、ビジネスプレゼンの場合は、基本的に「Why So型」を徹底することです。

先に結論を伝えて、あとから理由を言うという順番です。

コンサルやアナリスト、経営企画や経理、論文や学会発表もこちらです。

では、So What型はどういう時に使うかと言うと、よほど結論が奇抜で面白い時です。

ちなみに面白いというのは funny(笑える面白さ)ではなく interesting(興味がある)の面白いです。

オチまで引っ張れる場合です。

テレビ番組やYouTube、小説やアニメなどがこのパターンです。

コンセプト売り、という難易度高めのVSL(ビデオセールスレター)の場合は、このSo What型を使いますが、初心者はWhy So型をともかく徹底的に磨くことをお勧めします。

特に、最近では、タイパ(タイムパフォーマンス)という言葉もある通り、最後までオチをゆっくり聞いてくれる人が減っています。

なので、一番最初にインパクトのある結論を伝えて、その理由を後から伝えるという方法の方が、より多くの人に聞いてもらえる確率が高くなります。

もちろん、Why So型は、So What型よりもインパクトは下がります。

なぜなら、最初に種明かしをしてしまう手品のようなものだからです。

でも、だからこそ、その裏側を詳しく知りたいという欲求が想起されるのも事実で、そのほうが最後まで聞いてもらえる確率は高くなるのです。

【2種類のプレゼンの型】

「結論と理由」の基本構造から派生した2種類の型を共有します。

前のセクションで伝えた「Why So型」をまずは押さえておけば充分ですが、もう2つ、覚えておくと引き出しが増えるので、余裕があれば覚えてみてください。

■STAR型

STARというのは、

  • Situation(現状)
  • Target(目的)
  • Action(行動)
  • Result(結果)

の順番で伝えるプレゼンの型です。

このSTARというのは、もともとコーチングを行うときに、他人の目標達成を支援する技法として登場しました。

相手の現状と相手のありたい姿を明確にさせ、そのギャップをどういう行動で埋めるか、期待される結果はどのようなものか、それをどう測定するか、という順番で話を進めることで、相手を丁寧に導くことができます。

この手法は、コーチングのような、相手との共通理解を作りながら目標達成のための議論をするときに効果的です。

この手法は、経営戦略論や問題解決法でも昔から利用されていて、「As Is / To be構造」と呼ばれています。

「As Is」とは、ありのままの現状、「To be」はあるべき理想を意味します。

つまり、STARと本質的に同じです。

STAR構造のポイントは、相手にまず正しい現在地を認識してもらうことです。

そして、話し手と聞き手が一緒に目指すべき目的地を共有します。

そして、その目的地に向かう上で、どこに問題があるのかという共通理解を作ることが大事です。

これができれば、取るべき行動というあなたが提案したい主張が受け入れられやすくなります。

STARの最後の結果というのは、行動を実行した後に得られる未来のことを意味し、なおかつ、それをどう計測するかということを伝えます。

つまりは、ふわっとした結果ではなく「3ヶ月後に売り上げ30%増加」のような計測可能な未来を提示することで、より具体的なアクションを起こしやすくなります。

■仮説検証形式(論文形式)

次は、もう1つの仮説検証形式という型も紹介します。

これは、研究者が作成する学術論文や学会で発表する形式です。

科学という長年の研究で、プレゼン方法は磨き抜かれてきました。

現在では、その形式はほぼ固まっています。

実は、科学実験そのものと、プレゼンの本質はほとんど同じなのです。

その本質を、この論文形式で構成することで「学術思考の基本的様式」も学ぶことにつながります。

このプレゼン手法が有効なのは、まだ答えがはっきりと明確に出ていない分野で自分の主張を伝えたい時に効果的です。

実は、世の中の大半は答えがわかっていないことだらけです。

よく、「科学的に実証された」と聞くと、それがまるで答えのように錯覚している人がいますが、そんなことはありません。

科学的実証というのは、答えでもなんでもありません。

一つの可能性を証明したに過ぎません。

だから、科学者ではなくても、あなたが立てる仮説が聞き手に納得できるものなのであれば、それを受け入れてもらうことは可能です。

ということで、実際の学術論文形式がどのようになっているのか、お伝えします。

  • テーマ設定・問題提起
  • この論文で検討するテーマ・問題を述べる。
  • 先行研究
  • そのテーマ・問題に対するこれまでの既存研究成果を整理する。
  • そこから、既存研究に存在している、残された問題を指摘する。
  • 仮説構築
  • 残された問題に対する、論理的に導かれる仮説を提案する。
  • 分析方法
  • 仮説を検証するための方法を説明する。
  • 分析結果
  • その方法を使って実験や検証をしてみた結果を説明する。
  • ディスカッション
  • 分析結果を吟味する。仮説は正しかったのか? もし正しくなかったとしたらそれはなぜか? そのほか、新しく見つかった興味深い発見はあるか?
  • 結論
  • 分析を吟味した上で、結論としてどういえるか?

この型です。

このフォーマットをビジネスでどう使えるかというと、自分が実際に実践してみて、出した結果を提案する時に、とても有用です。

例えば、テーマとして、「フォロワー0から3ヶ月でnoteで5万円稼げる方法」というのを実践しようとしたとします。

先行研究では、実際にこれを実践した事例がないか探します。そして、その事例の中で、問題があれば、それを指摘します。

仮説構築で、その問題点を明確化して、論理的に言語化します。

そして、分析方法をどのようにするのか、明確化します。5万円稼げるという言葉の定義をどこまでに設定するかです。

例えば、note決済だけで5万円とするのか、例えば、そこから派生してアフィリエイトの収益も含めるか、というものです。

そのほかにもフォロワー数の増加やトラフィックに対するCV(コンバージョン)なども分析方法に入れるといいでしょう。

そして、分析結果として、実際に実践した結果を共有します。

ディスカッションでは、自分が出した仮説で実際にフォロワーゼロから3ヶ月でnoteで5万円稼げたのか、を検証します。

結果が出たのであれば、なぜ出たのか?出なかったのであれば、なぜ出なかったのか?を検証します。

その上で、新しい発見があれば共有します。

最後、結論で、自分が立てた仮説で実践した場合、noteで5万円稼ぐのか?という結論を導き出せます。

この手法の優れているところは、仮に5万円じゃなく2万円だったとしても、有効な結論が出るということです。

この形式は、実際の行動プランとして活用することもできます。

プレゼンを前提にアクションプランを立てていくという逆算的な発想にも有効です。

ぜひ、活用してみてください。

【聞き手の理解度を高める】

続いては、聞き手の理解度を高めるために知っておくべきことをいくつか共有します。

■人の集中力が15分で一度低下する

人の集中力が最も高い状態というのは、プレゼンを聞き始めてから15分で下がってしまいます。

これは、2017年に脳科学者で東京大学教授の池谷裕二さんとベネッセコーポレーションが共同で行った調査でわかったことです。

以下、その実験結果のベネッセコーポレーションからの公式プレスリリースです。

学習時間を細かく分けた「45分」で「60分」と同等以上の学習効果を発揮 ”長時間学習”よりも短時間集中の”積み上げ型学習”が有効であった

このように、15分で一旦休憩を入れることで、ガンマ波が回復しているのがわかると思います。

左が休憩を入れた場合で、右が60分続けて学習した場合です。



つまり、もしウェブ上の動画でプレゼンをする場合、倍速ができることを仮定して、30分で完成させると、集中力を維持してもらいやすくなることがわかっています。

もし、長めのプレゼンでも、50分を境目に、一気に集中力が下がっているのがわかります。

ですので、どんなに長くても50分以内で視聴できるように収めて、理想は、それ以下にすると聞き手の負担も小さくなるということです。

■あなたの主張を成立させるためのトライアンギュレーション

次は、相手に納得してもらうためにどのような説得材料をどれぐらい示すべきか、という点について考えたいと思います。

あなたの主張が受け入れられるかどうかには、大きく分けて3つの要素が必要になります。

1つ目は、ロゴス(論理)です。

破綻がなく飛躍もしておらず、その論理が誰が聞いてもある程度納得できる状態になっていること。

そして第2は、証拠(エビデンス)です。

数字、物などあなたの主張が正しいであろう根拠となる証拠を提示する必要があります。

言葉で言うのは、誰でもいくらでもできます。

そして、第3は、経験的妥当性です。

あなたの主張が現実に起こり得るだろうと納得させることです。

実例を挙げてみたり、聞き手の経験を引き合いに出したり、この現実世界で、それが起こりうる可能性が納得できて実感できるものである必要があります。

これら3つの観点で自分の主張が正しいかどうかを吟味することを

「トライアンギュレーション(三角測量)」と言います。

これら3つの側面から、自分の主張を検証することで、その主張は妥当だろうと聞き手に判断されます。

ただし、この3つをすべて検証できたら、それはベストですが、これら3つをすべて検証しないと、ダメということでもありません。

正直、これら3つすべてを検証してからプレゼンできることは稀だと思います。

でも、1つより2つ、というように、なるべくなら、自身で意識してプレゼンを作ることであなたの主張は通りやすくなります。

これが、プレゼンの骨組みとして、しっかりしていればしているほど、あなたの主張は納得してもらえる可能性が高くなります。

■「鳥の目・虫の目・魚の目」で理解を促進させる

「論理・証拠・経験的妥当性」が、あなたの主張を証明するための3つの手段だとするなら、「鳥の目・虫の目・魚の目」は、あなたの主張を多面的に見るための3つの視点です。

あなたの主張を違う視点から見てもらうことで、より、その主張の輪郭が明確化し、解像度も上がります。

鳥の目というのは、物事を俯瞰するための見方です。鳥のように高いところから、自分の主張を全体を通して見るイメージです。

これは、具体を抽象的に表現する、ということでもあります。

具体から抽象に上げる視点をチャンクアップとも言います。

そして、虫の目とは、「多面的に見よ」という意味です。

いろいろな立場から見た時に、どのように見えるか?

例えば、20代男性の立場から見たら?40代女性の立場から見たら?

というように、同じ事象を多面的に見ていくことを言います。

より具体的にする視点なので、チャンクダウンと言ったりもします。

そして、最後の魚の目です。これは「流れで見よ」という意味です。

過去から、現在、未来という時間軸から見た時に、自分の主張がどのように見えるのか?という視点のことです。

例えば、最近ではAIが騒がれていますが、このAIという時代の流れから見た時に、自分の主張はどのように見えるのか?

そのように多面的に見て、主張することで、あなたの主張はより説得力を増します。

つまり「鳥の目・虫の目・魚の目」というのは「俯瞰で見せる・多面的に見せる・流れで見せる」という意味です。

■客観性を保ち中立で主張する

これまで自分の主張を伝えるために、「論理・証拠・経験的妥当性」と「鳥の目・虫の目・魚の目」について学びました。

ただ、ここで重要なのは、いくら自分の主張を伝えたいからと言って、特定の主張を偏って伝えるのは問題があります。

例えば、あなたが特定の政治的主張を伝えたいという考えがあり、次のように表現したとします。

  • 6割もの人がその政策に賛成している
  • 10人中4人もの人がその政策に反対している

実はこれ、同じことを言っています。

ですが、前者はポジティブに感じますし、後者はネガティブに感じます。

では、これを客観的な表現に書き換えると、

  • 6割の人がその政策に賛成している
  • 4割の人がその政策に反対している

これは、「もの人が」を抜いて事実だけを伝えた表現に変えました。

些細なことですが、これだけで、客観的な表現になります。

人は、無意識で物事に対してバイアスを持って生活しています。

自分では客観的だと思っていても、無意識に自分が誘導したい方向性の表現になることがあります。

もちろん、多少はいいと思います。

でも、あまりに行き過ぎると、差別的発言になったり、過度な思想を押し付けたりする可能性があるので注意が必要です。

過度な印象操作は、信頼性を損なう可能性がありますので、中立の立場で客観的に事実を伝えるように気をつけたいところです。

■4Pではなく4Cで語る

次は、聞き手の立場に立った表現を意識する重要性についてお伝えします。

僕らは、つい、自分のベネフィットを中心にメッセージを伝えがちです。

これを4Pといいます。

  • Product:話し手が提案する商品・サービスの内容
  • Price:話し手が提案する価格
  • Place:話し手が提案する販売チャネル
  • Promotion:話し手が提供する情報

もちろん、これらは企画の段階では大事ですが、これをそのまま伝えてしまうと、聞き手は「それはあなたの話でしょう?」と思ってしまいます。

ですから、これを聞き手目線で変換する必要があります。

これを4Cと言います。

  • Customer Value:顧客の価値
  • Cost:顧客の負担
  • Convenience:顧客の利便性
  • Communication:顧客とのコミュニケーション

この視点になることで、主語が「I(私)」から「You(あなた)」もしくは「We(私たち)」に変わります。

同じことを言っていても、伝わる印象は全く変わります。ここに注意して表現してみてください。

■過剰一般化に注意

そして、注意したいのが、この過剰一般化です。

例えば、

  • 「今時の若いものはみんな根性がない」
  • 「ゆとり世代はみんなすぐに諦める」
  • 「女性はみんなこう」
  • 「男性はみんなこう」
  • 「B型はみんなこういうタイプ」
  • 「20代で成功できなければ絶対に成功者になれない」

のように言う人がいますよね。

こういうのを、学術の世界では「過剰一般化」と言います。

僕も子供の頃にこの手法を使っていました。

母親にゲームを買ってほしくて「このゲームみんな買ってるよ」と言って、説得を試みたことがあります。

しかし、全く成功しませんでした。

嘘だとバレたのでしょうね。

このように、子供のバレバレの嘘なら笑えますが、これが差別的な表現になると、信頼を失う可能性があります。

ですから、表現として正しいのは、

  • 「今時の若者の中には根性がない人もいる」
  • 「ゆとり世代の中にはすぐに諦める人もいる」

というのが正しい表現です。

まあ、当たり前のことを当たり前に言っているのですが、事実ではないことをさも事実のように言い切って信頼を失うよりはよほどいいです。

僕らはつい、自分の狭い世界がその全てだと思い込み、「みんなやっている」「みんな使っている」という表現をしがちです。

例えば、Xでバズっているものが、さも日本全国の総意のように勘違いしてみたり。

YouTubeの特定のインフルエンサーが言っていることがさも世の中の正しいことのように錯覚したり。

こういった偏った視点には気をつける必要があります。

プレゼンの中にこのような表現がないかチェックしてみてください。

【まとめ】

今回は以上です。

これらを意識してプレゼンの企画を作るだけで、かなり説得力があるメッセージを伝えることができます。

セールスでももちろん使えますし、YouTubeのような一般的なコンテンツにも活用できます。

僕らのビジネスは、アウトプットして初めて仕事をしたと言えます。

その上で、プレゼンテーションスキルは非常に重要なスキルです。

これらを元に、コンテンツ制作をしてみてください。

反応が良くなると思います。

それでは。

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山田 どうそん
受講生3万人以上のオンラインビジネス構築のやり方を教える講師|6年以上サブスクメンバーシップのコミュニティを運営|オンラインビジネスで安定したコミュニティシステムの作り方を教えている|1人でも多くの人にオンラインビジネスで物心両面の豊かさを手に入れられるようにディレクションできたらと思っている