今日は、お客さんが変化に抵抗する心理について深掘りしていきます。
私たちマーケッターは、お客さんに「購入」というアクションを起こしてもらう必要があります。
商品を購入するということは、お客さんにとって変化を受け入れることと同じです。
私たちはついお客さんへの「メリット」だけを強調してメッセージを伝えがちです。
しかし、実際にお客さんが購入をためらう最大の理由は「変化への抵抗感」なのです。
この抵抗感を、マーケティング用語でフリクション(摩擦)と呼びます。
この記事では、お客さんが行動を起こすとき、あるいは変化を促されるときに生じる4つの抵抗心理について解説します。
これらの心理を理解することで、商品の購入確率を高めることができます。
【魅力アピールをしても受け入れられない理由】
私たちが商品を作りお客さんに購入してもらう際、多くの人が頭の中にあるのは「商品の魅力をいかに伝えて購入してもらうか」ということです。
アイデアを形にして商品化し、それをお客さんに伝えて購入してもらいたい。これは誰もが持つ自然な思考です。
このように、アイデアの魅力を高めて変化への欲求を喚起するための戦略を、以降「燃料」と表現させていただきます。
多くの人が商品を販売する際、この「燃料」にばかり注力しがちです。
しかし、実際にお客さんが商品を購入する際には、これと反対の力が同時に働いていることを理解する必要があります。
この理解を深めるため、わかりやすい事例を紹介させていただきます。
【買いたいのに「購入」できない心理】
あるスタートアップ企業が、オーダーメイドの家具を販売していました。
この急成長中の会社は、世界に一つだけのフルカスタムのオーダーメイド家具(主にソファ)を、他社より75%も安く提供していました。
ターゲットは、ミレニアル世代(1981年〜1996年生まれの2000年代に成人になる世代)です。
このサービスでは、ウェブサイトや店舗で、生地、スタイル、寸法、素材、脚の形状など、あらゆる要素をカスタマイズできます。
多くの人が何時間もかけて、自分好みのソファをデザインすることを楽しんでいました。
ところが不思議なことに、カスタマイズを終えて「購入」ボタンを押す直前になると、購入者は行動を止めてしまうのです。
せっかく時間をかけてデザインしたソファなのに、最後の最後で購入を諦める人が続出しました。
さて、なぜだと思いますか?
値段でしょうか?デザインでしょうか?
実は、最後の購入ボタンを押す際の最大の障害は、
「自宅にあるソファ」
だったのです。
多くの購入検討者が、既存のソファの処分に悩んで決断を先延ばしにしていました。
どんなに魅力的な新しいソファでも、古いソファを片付けなければ置き場所がありません。
これが大きなフリクションとなり、最後の一歩を踏み出せない要因となっていたのです。
そこでこの会社は、「お客様の古いソファを引き取り、困っている家族に寄付する」というサービスを始めました。
その結果、成約率は劇的に向上したのです。
【新しいアイデアの受け入れに抵抗する4つのフリクション】
商品がどれだけ魅力的でも、その反対側にあるフリクションを理解し取り除かなければ、購入確率は下がってしまいます。
お客さんの行動を妨げるフリクションには、主に4つあります。
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
- 惰性(アイデアは現状を大きく変えるものか、それとも小さな調整で済むのか?)
- 労力(アイデアの実行にどれくらいの手間がかかるのか?)
- 感情(アイデアに対して不安や脅威を感じるか?)
- 心理的反発(変化を強制されていると感じるか?)
この4つです。
フリクションは大きな影響力を持ちますが、見つけるのが難しい特徴があります。
これら4つを理解することで、商品設計からセールスメッセージまで、お客さんのフリクションを最小限に抑えることができます。
まずは「燃料」について詳しく解説し、その後でこの4つのフリクションについて掘り下げていきます。
【人を動かす2種類の「燃料」】
4つのフリクションを深掘りする前に、「燃料」について理解を深めておきたいと思います。
なぜなら、フリクションを引き起こすのは「燃料」だからです。
燃料とは、アイデアを魅力的にして説得力を高めるためのものです。アイデアそのものの特徴はもちろん、メリットや世の中への伝え方など、あらゆるものが燃料となります。
この燃料があることで人はフリクションを起こすため、両者は常に同時に存在することを理解する必要があります。
まさに光と影、陰と陽のような関係です。
そのため、4つのフリクションを理解するためにも、燃料への理解は欠かせません。
この燃料には、大きく2種類あります。
- 促進型燃料
- 回避性燃料
この2つです。
■促進型燃料とは?
促進型燃料とは、アイデアや魅力、説得力を高める力のことです。
これは、伝統的なマーケティングの基本そのものです。
4Pがこれにあたります。
- Product(商品):アイデアそのものの特徴やメリット
- Place(流通チャネル):人がアイデアに出会う可能性のある場所や環境
- Price(価格):割引や期間限定の特典
- Promotion(販売促進):広告などアイデアに気づかせるための手段
これは、フィリップ・コトラーによって広められた伝統的な「4P」と呼ばれるもので、多くの人が知っているはずです。
その後、他の研究者たちによって、さらに3つの要素が追加されました。
- Packaging(パッケージング):商品をお客さんに届ける形状
- Positioning(ポジショニング):アイデアを他の商品と差別化する要素
- People(人):アイデアに関わる人々
これにより合計「7P」となりました。
多くの人が、この要素だけでビジネスを進めようとしてしまいがちです。
しかし、これは燃料の持つ側面の一つでしかありません。
■回避性燃料とは?
回避性燃料とは、何もしないことによるリスクやコストを強調することで変化を促す燃料です。
未来の変化に対するワクワク感ではなく、未来への不安や疑念に訴求していきます。
回避性燃料には、主に次のようなものがあります。
- Fear(恐怖心):何もしないことや誤った選択をすることへの不安や懸念
- Loss(喪失感):自分の持ち物を失うことへの苦痛
- Risk(リスク):新しいことへのチャレンジがもたらす不確実性への認識
- Regret(後悔):決断を誤った際に予想される後悔の念
- Impatience(焦り):即座に変化を求める強い欲求
これらの感情は、「間違った選択」への恐れを呼び起こすものです。
これら5つの訴求は、マーケティングでよく活用されています。
【燃料(アイデアの魅力)よりも抵抗(フリクション)にフォーカスすべき理由】
私たちマーケッターは、この2つの燃料にフォーカスしてマーケティングメッセージを考えがちです。
理由は単純で、わかりやすいからです。そのため、メッセージを作りやすいのです。
ですが実は、人の心は燃料よりも抵抗に大きく支配されているのです。
例えば、医者から「いい知らせと悪い知らせ、どちらを先に聞きたいですか?」と聞かれたとします。よくドラマでも見かけるこのシーンで、あなたはどう答えますか?
最近の研究では、大多数の人(78%)が悪い知らせを先に選ぶことがわかっています。これは、良いことよりも悪いことの方が強く印象に残るためです。悪い知らせを後に聞くと、その印象が強く残ってしまうため、先に聞いておきたいという心理が働くのです。
このように、ポジティブなことよりもネガティブなことに注意が向きやすい心理を「ネガティビティ・バイアス(否定的偏向)」といいます。
この傾向は、結婚生活についての興味深い社会実験でも確認されています。ポジティブな会話とネガティブな会話は、どのような比率であれば良好な婚姻関係を保てるのでしょうか。
研究によると、ネガティブな出来事1つに対して、ポジティブな出来事が5つ必要だとわかっています。つまり、口論や侮辱といったネガティブな出来事が1つあった場合、それを埋め合わせるには5つのポジティブな出来事が必要というわけです。
言い換えれば、ネガティブな出来事はポジティブな出来事の5倍もの影響力を持つということです。人は、ネガティブなことをより長く記憶に留め、より素早く処理する傾向があります。
これは人間の本能に深く関係しています。例えば、人混みの中で怒った表情を見つけるのは簡単ですが、笑顔を見つけるのには時間がかかります。これは、脳の扁桃体が危険の察知に多くのニューロンを使っているためです。
つまり、私たちの体は危険を感じると反射的に反応するよう作られているのです。そのため、人はネガティブなことに敏感に反応するようプログラムされているのです。
【マーケッターを「燃料」思考にさせる脳の癖を理解する】
私たちマーケッターは、ついつい燃料思考になりがちです。
それはなぜなのでしょうか?
この問いに答えるには、悪い結果を人の心がどのように解釈するかを理解する必要があります。
例えば、あなたがメルマガをスタートさせようと、メルマガ登録フォームのページを作成したとします。
でも、一向に登録がありません。
ここであなたは、考えます。
プレゼントが魅力的じゃないのだろうか?だったら、もっと魅力のあるプレゼントを追加しよう。
メッセージがわかりづらいのだろうか?もっとわかりやすくしよう。
それでも、登録がない場合、もしかしたらこのように考えるかもしれません。
みんな、やる気がないんだ。
最近は、時代が変化して、自分のメルマガで学ぼうとする意欲のある人がいないのかもしれない。
このように、思ったような結果が出ない場合、人はいろいろなことを考え、説明することができます。
人にはある癖があります。
それは、行動が内的要因(その人の性格や能力)の結果だと思い込み、状況的要因(その場の状況や環境)を軽視することです。
つまり、結果が出ないのは、意欲や意思の作用と考えがちということです。
このような人間の心の癖のことを「根本的な帰属の誤り」と言います。
つまり、悪い出来事を故意と結びつけてしまうということです。
これはDNAの奥深くに刻み込まれている人間の癖です。
だからこそ、マーケッターは、人の意思を変えようとして、「燃料」にフォーカスして、訴求してしまうのです。
でも実際は、必ずしもそうとは限りません。
例えば、先ほどのメルマガ登録の件ですが、よくよく調べてみたら、アクセスが1日1件しか来ていなかった、としたらどうでしょうか?
そもそも人がページに来ていないわけですから、登録のしようがありません。
それを、「プレゼントがよくなかったのか?」「メッセージが良くなかったのか?」と「根本的な帰属の誤り」を引き起こしてしまい、悩み続けてしまっています。
その前に、そもそもアクセスが1日1件ということは、「集客の動線ができていなかった」という状況要因を疑う必要があったわけです。
でも、人はなかなかそういうふうに考えられないものです。
今回のメルマガ登録の事例は、まだわかりやすかったので、気づくことができるかもしれません。
ですが、このような脳の癖によって、「燃料」ばかりに無意識に意識を向けてしまうことは、往々にして起きてしまうのです。
【抵抗(フリクション)は目の前にあっても気付きにくい】
もう一つ、私たちが燃料思考になりがちな理由があります。
それは、燃料は目に見えやすいのに対し、抵抗(フリクション)は見えにくいからです。
燃料はシンプルにメリットを提示すればよく、少し考えるだけでわかることが多いです。
一方で、抵抗(フリクション)は意識的に発見する必要があります。
冒頭のオーダーメイド家具のソファの事例を思い出してください。これは入念なリサーチによってはじめて気づけたものでした。
抵抗(フリクション)を理解するには、自分の視点をアイデアから見込み客へと移す必要があります。
さらに、お客さん自身が抵抗(フリクション)の原因を認識していないことも多々あります。仮に理解していても、うまく説明できないこともあります。
なぜなら、人の感覚と感情は異なるものだからです。感覚は経験から感じ取るもの、感情は感じ方を決める複雑な認知機能です。
人は「嬉しい」「悲しい」という感情自体は知っていても、その理由がわからないことが多いものです。
例えば、「買おうと思っていたのに、購入直前になんとなく躊躇してやめてしまった」――こういう経験は誰にでもあるはずです。
「なぜ買うのをやめたのか?」と聞かれても、「なんとなく」とか「今じゃない気がした」としか答えられないことがあります。
そのため、お客さんの抵抗(フリクション)を見つけるには、マーケター側が意識的に探る必要があります。
この前提を理解することこそが、これから見込み客の抵抗(フリクション)を把握する上で重要なのです。
【惰性について】
では、4つのフリクション(ここからはフリクションに統一して記述します)について順番に解説していきます。
まず、一つ目の惰性です。
惰性とは、人が慣れ親しんだものを自然と好むという性質のことです。つまり、新しく見慣れないものに対して、人は無意識に抵抗を感じるということです。
この現象は「単純接触効果」(または「ザイアンス効果」)として知られています。これは、人が物事に触れる回数が増えるほど、それに対して好感を持つようになる心理効果です。イメージ広告は、まさにこの惰性に働きかける施策といえます。
では、この惰性にどう対応すればよいのでしょうか?
一番シンプルな方法は、未知のものを既知のものに変えることです。そのために、あなたの新しいアイデアや商品について繰り返し発信することが重要です。
同じ話を繰り返すことに抵抗がある人もいますが、むしろ繰り返すべきなのです。聞き手が「ああ、それはもう聞いた」と思うくらい繰り返すことで、そのメッセージは人々の心に定着します。
もう一つの有効な手段は、相対的な比較対象を示すことです。あなたの商品やアイデアを、何と比較すれば分かりやすくなるでしょうか?
例えば、同じ文章でもPDFとKindle本では、人々の受け止め方が大きく異なります。文章の内容は全く同じでも、PDFは無料でもらえるもの、Kindle本はお金を払って購入するものと捉えられます。
このように、人は物事を相対的に判断します。例えば、普段からKindleを使っている人に「私の商品はKindle本のようなものです」と説明すれば、未知のものが既知のものとなり、受け入れられやすくなります。
つまり、惰性というフリクションに対抗するには、次の2つを意識するとよいのです。
- 単純接触効果(ザイアンス効果)を活用し、商品やアイデアを繰り返し伝える
- 相対的な比較を用いて分かりやすく伝える
これらの方法を実践することで、フリクションを効果的に軽減できます。
【労力について】
次は、労力というフリクションについて解説します。
労力とは、簡単に言えば「めんどくさい」という心理のことです。
人は基本的に、難しいことやめんどくさいことより、簡単なことを好みます。これは遺伝子レベルで組み込まれている本能です。
人はエネルギー消費に敏感です。狩猟採集時代には、エネルギーが枯渇することは命に関わることを意味していたため、無意識にエネルギーを使うことを避けようとします。
この特徴を「最小努力の法則」と呼びます。新しいアイデアがどんなに魅力的でも、必要な労力が大きすぎると、強いフリクションが生まれます。
例えば、「最強のダイエット法」として「毎日10km走れば必ず痩せられる」と提案したとします。確かに効果はあるでしょうが、こんな大きな労力を求められると、すぐに「無理だ」とフリクションが起きてしまいます。
人は最小の努力で最大の効果を求める生き物なのです。
この最小努力の法則は、私たちの生活のあらゆる場面で見られます。例えば、言語使用においても同じです。特に若者は言葉を省略する傾向にあります。
- 「コスパ=コストパフォーマンス」
- 「タイパ=タイムパフォーマンス」
これらも最小努力の法則の表れです。1949年、ハーバード大学の言語学者ジョージ・ジップは、人が時間とともに最小の努力で最大の報酬を得ようとするこの傾向を「ジップの省略の法則」として提唱しました。
この最小努力の法則は人間の本能に根ざしているため、単に説教しても変えることはできません。
では、この「労力」というフリクションにどう対応すべきでしょうか。まず、労力には2つの側面があることを理解する必要があります。
- 苦労
- 茫漠感
この2つです。
一つ目の「苦労」は比較的わかりやすいものです。これは単純に、作業や行動に使われるエネルギーの量のことです。1000文字より1万文字を書く方が、1kmより10km走る方が苦労が大きくなります。これがフリクションを生む原因になるのは明らかでしょう。
二つ目の「茫漠感」は、あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、「どうすればいいのかわからない」「何がわからないのかもわからない」という不安な心理状態のことです。霧の中にいるような感覚だと考えるとわかりやすいでしょう。
では、この「苦労」と「茫漠感」を軽減するために重要なことを説明しましょう。
「苦労」を軽減するには、「行動の簡素化」が重要です。あなたのアイデアをより簡単にできないか、これだけ実践すればOKという状態に持っていけないか、考えてみてください。
私たち提供側は、知識が豊富すぎるがゆえに、完璧な結果を求めてあらゆることを提示しがちです。しかし大切なのは、「小さく始められる状態」を作ることです。まずは「これだけやればいい」という簡単な状態を作り、一歩を踏み出してもらうことを意識しましょう。
「茫漠感」を減らすには、ロードマップ(サクセスパス)を示すことが効果的です。人は、ゴールまでのステップが明確にイメージできると、行動を起こしやすくなります。
この2つを意識して価値を提供すれば、「労力」のフリクションを軽減することができます。
【感情について】
続いては、感情面のフリクションについて説明します。
人が感情の生き物だということは、誰もが知っている当たり前のことです。
しかし、商品やアイデアを提案する側になると、このことを忘れ、機能面の価値にばかり注目してしまいがちです。
感情面のフリクションを理解するために、まず感情面の価値について深く理解する必要があります。
これを理解する上で重要なのが「ジョブ理論」です。これはプロダクト・イノベーターのボブ・モエスタが提唱し、後にハーバード・ビジネス・スクールの故クレイトン・クリステンセン教授が「ジョブ理論:イノベーションを予測可能にする消費メカニズム」で発展させた考え方です。
この理論の核心は、人は3つの基本欲求を満たすために商品・サービスを「雇用」するという考え方です。
- 機能面の価値:例)時間を節約できる
- 社会面の価値:例)同僚に認められる
- 感情面の価値:例)喜びが得られる
これら3つは商品購入の判断に深く関わっており、互いに密接に結びついています。
特に注目すべきは、感情的なフリクションが生じると、たとえ合理的なメリットがあっても、人は購入を躊躇しがちだということです。
典型的な例が冷凍食品です。
現代では、様々な料理を冷凍食品で作ることができます。
ところが、毎食冷凍食品を使っていると、「料理を手抜きしている人」と周囲から見られ、社会面の価値が下がってしまう可能性があります。
これにより罪悪感を感じる人も少なくありません。
つまり、感情面の価値が低下しているのです。
冷凍食品は機能面では優れていますが、社会面や感情面を無視すると、理屈では分かっていても心から納得できないことが多いのです。
これは文化とも密接に関連しています。
このように感情面に配慮することで、あなたのメッセージはより効果的に伝わります。
では、感情面のフリクションにどう対応すべきでしょうか。鍵となるのは、顧客の「ジョブ」を言語化することです。
以下の問いを考えることで、感情面に配慮した設計が可能になります。
「見込み客にとって、あなたのアイデアが生み出す機能面、社会面、感情面の価値は何か?」
これを有名な5Why分析で掘り下げてみましょう。
「なぜ?」を5回繰り返すことで、見込み客の本質的な欲求や課題が見えてきます。
【心理的反発について】
これまでの「惰性」「労力」「感情」のフリクションも大事ですが、その中でも特に対処が難しいのが「心理的反発(リアクタンス)」です。
人は本来、天邪鬼な性質があり、「やめろ」と言われるとかえってやりたくなります。同様に、「変化しろ」と言われると、たとえ合理的なメリットがあっても反発してしまうのです。
この心理が起きる根本的な原因は、自由を奪われることへの抵抗感にあります。選択の自由が制限されると、たとえ結果が同じでも強いストレスを感じてしまいます。
人には本能的に自律性を守ろうとする欲求があるため、どんなに正しい提案であっても、自律性が脅かされると感じた時点で耳を閉ざしてしまいます。
例えば、喫煙や飲酒が最も分かりやすい例です。周囲が論理的に禁煙や禁酒を勧めれば勧めるほど、かえって反発が強まることが研究で示されています。
特に、データを示して相手の過ちを指摘すると、むしろ自分の立場をより強く主張するようになってしまいます。健康被害のデータを示して飲酒をやめるよう説得しても、逆効果になりかねないのです。
これはギャンブルなど、他の依存的な行動でも同様です。人は正論で説得されそうになると、むしろ自分の考えに固執してしまうのです。
ここで重要なのは、相手が「説得されている」と感じた時点で効果が失われるということです。人は他者からの説得を極端に嫌うものなのです。
では、どうすれば人の行動は変わるのでしょうか?
答えは、「自分で自分を説得する」状態を作ることです。これを「自己説得」と呼びます。
この自己説得で重要な第一のポイントは、「指示するのではなく質問する」ことです。
「あなたは、こうするべきです」
というのではなく
「私はこう思うのですが、あなたはどう思いますか?」
このように、相手に考えてもらい、自分自身で結論を導き出せるよう促すのです。
そして、もう一つ重要なのが「小さなイエス」を取ることです。誰もが同意できる小さな質問から始めることで、相手は提案を受け入れやすくなります。
これは販売の分野では「イエス誘導法」と呼ばれています。
たとえば「あなたは自分と違う意見を受け入れる用意はありますか?」と質問します。
これなら「イエス」と答えやすいですよね。
この小さな同意を得ることで、一貫性の法則が働き、相手は新しい意見に耳を傾けやすくなります。
一見些細なことに思えるかもしれませんが、このちょっとした工夫が、想像以上に人の心理に影響を与えるのです。
【まとめ】
ここまで、「燃料」と「4つのフリクション」について詳しく解説してきました。
アイデア(燃料)を受け入れてもらうには、まず4つのフリクションを理解し、それらを取り除くことが重要だとお分かりいただけたと思います。
これらのフリクションは本能的なものであり、非常に強力な影響力を持ちます。
このフレームワークを通じて、なぜ理屈だけの説得が効果的でないのか、体系的に理解できたのではないでしょうか。
これから商品やサービスを作り、そのアイデアを受け入れてもらおうとするとき、この4つのフリクションに十分配慮できているか確認してください。
VSL(ビデオセールスレター)制作時にも、この考え方は重要な要素となります。
フリクションを解消するためのサポートや特典を用意することで、成約率の改善が期待できます。
それでは、以上となります。
ありがとうございました。













